後遺障害の認定ポイント(むち打ち専門)
交通事故被害者の6割が、頚椎捻挫や腰椎捻挫の傷病、いわゆるムチウチだといわれています。
ムチウチの場合、骨折などの外傷がないため、痛みの程度は大きくないと思われがちですか、
頭痛やめまい、吐き気など、日常生活の支障が生じることもあります。
約半年程度の治療を続けても痛みなどが治らないから、まだまだ治療をしたいと訴える人もいらっしゃいますが、
厳しい言い方かもしれませんが、約半年程度、現代の医療水準での治療を懸命に続けても完治しなかった症状が、
引き続き治療を続けることで劇的な改善が見込めるでしょうか?
おそらく、症状は、良くなったり悪くなったりを繰り返し改善しない可能性が高いと思われます。
そのような状況であれば、一定の時期を症状固定日とし、交通事故の後遺障害に当たるか否かの判断を受けて、
示談交渉などによる紛争解決を目指し、そして、適切な賠償金を受け取り、それを今後の治療費などに当てていく。
これが、相手方保険会社との交渉による心身のストレスから解放される賢明な解決方針だとさち総合法律事務所は考えています。
これは、治療費の支払をめぐり症状固定か否かで苦しんでいる多くの被害者と接してきたことに基づく偽らざる実感です。
治療を継続したにも関わらず痛みが残存してしまった場合は、後遺障害の申請を行いましょう。
交通事故の後遺障害等級認定の重要性
交通事故の後遺障害に認定されるメリットは、損害賠償額が飛躍的に上がる点にあります。
具体的には、入通院期間に応じて支払われる「傷害慰謝料」とは別に、
「交通事故の後遺障害慰謝料」と「逸失利益」という損害賠償を受けることができます。
そもそも、交通事故の後遺障害等級認定の申請をしていない、
または申請しても交通事故の後遺障害に該当すると認定されなかったとなると、低額の損害賠償額しか支払われません。
しかし、交通事故の後遺障害に該当すると認定されると、損害賠償額が一気に上がるので、
「納得できる損害賠償額を得られる」という点で、交通事故の後遺障害等級認定がもたらす意味は非常に大きいといえます。
認定される場合 |
認定されない場合 | |
交通事故の後遺障害慰謝料 | 〇 請求できる | × 請求できない |
逸失利益 | 〇 請求できる | × 請求できない |
解決時の納得感 | 高い | 低い |
交通事故の後遺障害として認められるには
交通事故の後遺障害として認められるには、大きく4つの要素あります。
①傷病が治ったときに残存するもので、傷病と相当因果関係があること
②将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的な状態であること
③その症状の存在が医学的に認められていること
④労働能力の喪失をともなうもの
という内容になります。
一般的に後遺症が残ったという状態であったとしても、残存したすべての症状が、
交通事故における後遺障害であると認められるわけではありません。
「後遺障害別等級表」に該当するものが交通事故の後遺障害であると認められることになります。
交通事故の後遺障害の認定手続は事故直後から事前準備は始まっている!
交通事故の後遺障害等級認定の審査は、客観的な医学的所見を重視した、徹底的な書面審査が基本です。
恐ろしいことですが、事故直後の治療方針を誤ってしまったがために、適切な交通事故の後遺障害等級認定を得る機会を失うことすらあります。
「医師が見落としに気付かず、そのまま治療を続けてしまった」
「交通事故の後遺障害の存在に否定的な医師だった」
「整骨院・接骨院にしか行っていない」など、
適切な後遺障害等級認定の機会を失った事例を挙げればきりがありません。
たとえ、事故後長期間経過した後に、症状の原因や傷病名が判明したり、
検査結果や画像所見から異常が発見されたとしても、事故との関連性(因果関係)を疑われても仕方がないのです。
適切な交通事故の後遺障害等級認定を得るための準備は、事故直後から始まっています。
そのため、事故後の早い時期に、後遺障害等級認定も含めて交通事故案件を多く取り扱う弁護士などに相談して、
どのような検査を受け、画像を取得するかなどの戦略(治療方針)を一緒に立てていく必要があります。
ムチウチの後遺障害等級認定のポイント
さち総合法律事務所が考える、ムチウチの後遺障害等級認定ポイントは4つです。
1.痛みなどの症状が受傷時から症状固定時まで変わらず継続していることを証明する
事故に遭った場合、受傷直後に1番痛みを感じると思われることが一般的です。
もちろん、ムチウチの場合、事故翌日に痛みが生じてくることもありますが、
例えば1か月後に突然痛くなるというのは不自然です。
では、受傷直後から痛かったことを証明するにはどうしたらよいのでしょうか。
それは、整形外科などの病院へ行き、医師の診察を受診することです。
診断時に痛みのある部位やその程度など、きちんと自覚症状を医師へ伝えることが重要です。
受傷時の痛みと同様に、その痛みが継続していることを証明することも必要です。
途中で痛みが薄れたり、消失した場合も、その時点で治っていたという解釈ができますので、
痛みが続いている場合は継続して通院する必要があります。
2.MRIを撮影すること
頸椎捻挫や腰椎捻挫によって痛みが生じる場合、レントゲン画像では、
その症状の原因となる何らかの異常があるかないかを判断することは難しいと言われており、
通常はMRIを撮影します。
ただ、病院によっては、MRIを撮影する機器などの整備がないため、
積極的にMRIを撮影しようとしない医師もいます。
しかし、交通事故の後遺障害等級認定を判断するにあたり、MRIを撮影しているかどうかは、
大きなポイントになりますので、撮影することを医師に依頼してください。
設備がない病院でも紹介状を作成してもらい、他院にて撮影することが可能です。
3.通院を継続すること
頸椎捻挫や腰椎捻挫による痛みがどれほど大きな痛みであるかどうかは証明できません。
痛みの感じ方は人によって違いますし、「すごく痛い」と言っても相手の受け止め方も様々です。
痛みの大きさを言葉で表現することはできませんので、その証明には通院回数が1つのポイントとなります。
痛みが生じている、ということは通院をしてリハビリをせざるを得ない、
そのために自ずと通院回数も増えると解釈しています。
さち総合法律事務所がこれまで多くの交通事故の後遺障害等級認定の経験を重ねてきましたが、
その結果を分析すると、通院回数の目安は週に3~4回、1か月に16~17回くらいの通院を継続すると、その証明になると考えています。
4.的確な後遺障害診断書を作成すること
後遺障害診断書は受傷時からの症状や、後遺障害となる残存した症状を書面としてまとめて作成する重要な診断書です。
ムチウチの記載ポイントは3つです。
①自覚症状
自覚症状の記載欄には、文字どおり自分の痛みを感じる部位やその程度などを医師に伝え、医師が書きます。
前述したとおり、「痛みがずっと変わらずに継続していたことを」書くことがポイントです。
逆に「○○の時は痛い」などと書いてしまうと、その時だけ痛いということは、それ以外の時は痛くない、
つまり回復傾向にあると判断されてしまい、交通事故の後遺障害等級としては認定されないことがあります。
②他覚症状および検査結果
この記載欄には、MRIなどの異常について記載します。
また、神経学的所見の有無について記載をします。
神経学的所見とは、神経学的テストよってどの部位に障害が存在するのかを判断した結果です。
頸椎捻挫の場合、一般的には、頚部を左右や前後に傾け、
痛みが生じるかどうかを確認するジャクソンテストやスパーリングテストという神経学的テストを行います。
③障害内容の憎悪・緩解の見通しなどについて
この記載欄は医師の最終判断といってもよいでしょう。
これまでの通院履歴、最終的な検査等の結果、後遺障害が残存するものなのか否かの見解を書きます。
「改善余地なく、症状固定」「症状が残存している」などという見解は、
今後の改善余地が不明として後遺障害となりうる可能性がある状況と判断されます。
しかしながら「改善の余地あり」「回復傾向にあり」という判断であれば、
後遺障害となる可能性は低いことから、交通事故の後遺障害等級認定にも該当しない可能性があります。
ムチウチの後遺障害等級認定
ムチウチの傷病、症状が後遺障害に認定される場合、該当する等級は14級9号もしくは12級13号です。
ではこの等級の違いはどこにあるのでしょうか。
等級 | 症状 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号と12級13号は、文字にしてしまえば、たったこれだけの違いです。
どんな痛みを「頑固」と言うのか、「頑固」と言わないのか、曖昧な表現でよく分からりませんが、
「画像所見があるかないか」という違いが、14級9号か12級13号かの認定判断に大きく関係しているといえます。
頸椎捻挫(ムチウチ)の症状として、手に痺れを感じることがあります。
これを交通事故の後遺障害の観点から捉えると
「痺れを感じるという自覚症状」と「痺れのある部位と関連する神経に異常がある」という判断内容になります。
この自覚症状と神経異常も後遺障害等級認定の1つの要素なのですが、
12級13号の認定判断においては、さらに「画像所見があること」が最も重要なのです。
神経の異常は、椎体や椎間板が神経を圧迫することで生じます。
神経を圧迫しているかどうかはMRIの所見から判断するのです。
症状があっても、画像では大きな異常は見られない場合もありますが、
画像でも判るほどの異常がある、すなわち、「頑固な」神経症状を残しているという解釈なのです。
手に痺れを感じる症状であれば、頸部にヘルニア等の異常所見があることが考えられます。
頸部には8本の神経があり、それぞれ1本ずつ支配領域があるのです。
人間の体は本当に精密にできていて、この神経の1本に何らかの異常があれば、
手全体に痺れが出るのではなく、親指側や小指側等、その神経の支配領域にのみ影響が出るのです。
つまり、「痺れている部位」と「その部位に痺れをもたらす原因となる神経に異常があるかどうか」という
“つじつまのあった症状”を見分けることが必要なのです。
交通事故の後遺障害等級認定は誰が判断するのか?
交通事故の後遺障害等級認定は、主治医の判断によるのではなく、
「損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)」という組織が専門的に行なっています。
ですので、後遺障害等級認定を受けられるかどうかの見通しは、
「医者が○○と言っていた」との発言のみではあてにならないのです。
交通事故の後遺障害等級認定において、医師の作成する「後遺障害診断書」が必要です。
そして、この「後遺障害診断書」の記載内容が、決定的な医療的証拠(以下「医証」といいます)となります。
なぜなら、自賠責損害調査事務所での審査は、直接面談のうえで自分の症状などを訴える機会はなく、
書面審査が基本となるからです(顔面の醜状痕などについては、直接面談があります。)。
なお、後遺障害等級認定の結果がわかるまでに要する期間は、
追加の調査などがなければ、通常、申請してから1か月から2か月くらいになります。
交通事故の後遺障害等級認定を受けるための手続
交通事故の後遺障害等級認定の申請手続には、2つの方法があります。
まず1つ目の方法ですが、相手方の保険会社が申請手続を行ってくれる「事前認定」という方法があります。
もう1つの方法が、被害者側が自ら申請手続を行う「被害者請求」という方法になります。
いずれの方法による申請手続も、後遺障害診断書を作成し、
自賠責保険会社に必要書類などを収集・提出して「損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)」における審査を経て、
認定結果が出る点では同じ手続といえますがメリットは明確にわかれます。
メリット | デメリット | |
事前認定 | 資料収集など申請手続をやってもらえるので 手間がかからない |
①自分に有利な医証などが提出できない ②申請過程を把握できない ③認定結果が分かるのが遅い ④認定されても、自賠責保険分の保険金が すぐに支払われない |
被害者請求 |
①自分に有利な医証などが提出できる ②不利な事情を補う文書を作成して提出できる ③事前認定と比べて認定結果が早く分かる ④認定されると、先行的に自賠責保険分の 保険金が支払われる |
資料収集など申請手続を自分でやる必要があるので、手間がかかる ⇒弁護士に依頼すれば、代わりに申請手続をやってもらうことはできます。 |
「事前認定」で被害者側が自らすべきことは、基本的に、後遺障害診断書の作成を主治医に依頼し、
後遺障害診断書が完成すれば、それを受け取り、相手方の保険会社に送付するだけです。
そのほかの必要書類などの収集・提出の手続は、相手方の保険会社がやってくれます。
ですので、申請手続としては、楽です。
しかし、「事前認定」のメリットは、それだけです。
どんなに被害者の方が症状に苦しんでいても、相手方の保険会社は、
単に必要書類などの収集・提出をするだけで、交通事故の後遺障害等級の認定がなされるような工夫・努力は一切しません。
なぜなら、言うまでもなく、相手方の保険会社は、被害者側の味方ではなく、
また、後遺障害等級認定がなされ損害賠償額が飛躍的に上がると困る立場にあるからです。
「被害者請求」のメリット・デメリットは、
「事前認定」のメリット・デメリットと表裏の関係にあると思っていただくとよいでしょう。
自ら申請手続をする場合、自分に有利な医証などを作成・提出できるということが最大の理由といえます。
確かに、自分で提出するため「被害者請求」は、手間がかかるので面倒くさいかもしれません。
しかし、自ら工夫・努力をして申請すれば、仮に、思うような結果が出なくても、一応の納得を得られます。
「事前認定」で、申請手続の過程が分からないまま結果だけダメでしたと言われても、
人間なかなか納得できるものではありません。
そうであれば、納得できる認定結果を得る、すなわち、適切な後遺障害等級認定を得るためには、
やはり、「被害者請求」による申請を選択すべきです。
さち総合法律事務所にて交通事故の後遺障害等級認定の申請を行う場合は、
全て被害者請求にて対応をしています。
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まずは、お電話かメールにて、お気軽にお問い合わせください。
その際、ご相談をスムーズに行うため、ご相談内容等を簡単にお伺いいたします。 -
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