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マタニティ・ハラスメントの最高裁判決が出ました!

2014.10.24

マタニティ・ハラスメントの社会問題化

さて、本日平成26年10月23日、最高裁判所第一小法廷において、注目の判決が出ました。

 

それは、「マタニティ・ハラスメント」(通称「マタハラ」といいます。)に関する判決です。

 

簡単に事案の内容をご紹介しますと、副主任の職位にあった理学療法士である女性が、妊娠のため、軽易な業務への転換(労働基準法65条第3項)を求めたところ、副主任を外されることになりました。

 

その後、育児休業の終了後も副主任に戻してもらえなったことから、就業先に対して、副主任を外したことは、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(通称「均等法」といいます。)9条第3項に違反する無効なものであるなどと主張して、管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めていた事案になります。

 

ここで、2つの法律が出てきました。せっかくなので、どのような条文なのかをご紹介しておきます。

 

<参考条文>

労働基準法

 

第65条  使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

 

 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 

 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

 

 

均等法

 

第9条  事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。

 

 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。

 

 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 の規定による休業を請求し、又は同項 若しくは同条第二項 の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

 

結論としては、原審(広島高等裁判所)の判断には、審理不尽(十分な審理が尽くされていないこと)の点があるので、原判決を破棄し、審理を尽くさせるため、事件を広島高等裁判所に差し戻すことになりました。

 

この結論が意味するのは、広島高等裁判所の「副主任を外した措置は違法ではない」との判断が、覆る可能性を示しています。

 

 

マタハラ最高裁判決が、会社・企業に与える影響は?

 

最高裁判所は、今回の判断をする上で、マタハラによる降格措置について、「原則ダメ、例外的にOKになる場合がある」との一定の基準・規範を示してくれています。

 

ちょっと長いですけど、一部引用させていただきます。

 

マタハラ判決

 

具体的には、

 

「・・・女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが,

 

①当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度,上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして,当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき又は

 

②事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であってその業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは

 

同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。」

 

という一定の基準・規範になります。

 

非常に大雑把な分析になるのですが、事業主(使用者)側からすれば、かなり慎重な手続を踏んで対応をしなければ(上記①の場合だと、証拠に残る形で合意書面などを残しておく等)、後々、マタハラを理由に女性労働者から損害賠償請求を受けるリスクが高まるといえます。

 

会社・企業の経営者の皆さま(現場の責任者・上司なども含みます。)は、改めて、自社において、マタハラが行われていないかを確認し、また、マタハラを引きこさない職場環境の構築を考えていく必要があります。

 

 

 

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